ブルースの有名なギタリストをはじめ、バンド、女性シンガー、日本人アーティストを紹介します。ブルース特有の哀愁を体感しませんか?
目次
ブルースのギタリスト(代表的)
まずは、ブルースの代表的なギタリストを紹介します。「ブルースのおすすめは?」と聞かれたときに答えたいようなアーティストを集めました。
B・B・キング/ The Thrill Is Gone
B.B.キングは、ブルース界の巨人と称されることもあるブルースを代表するギタリストです。黒人らしい演奏から白人のようなスタイルまで幅広くカバーします。「T=ボーン・ウォーカー、エルモア・ジェイムズ、ジャンゴ・ラインハルト、この三つの演奏を組み合わせたのが俺の基盤だよ。」というように、T-ボーン・ウォーカーの影響を強く感じます。
T-ボーン・ウォーカー/ Stormy Monday
T-ボーン・ウォーカーは、それまでアコースティックでしか演奏されていなかったブルースに、エレキギターを最初に持ち込んだとされる人物です。ブルースとはいっても曲調はジャズに近く、まだまだ白人の要素が強く残っていました。
マディ・ウォーターズ/ Got My Mojo Working
泥だらけになるまで遊んでいたことから、その名がついたマディ・ウォーターズ。T-ボーン・ウォーカーの始めたエレキギターを、ブルースに本格的に持ち込んだことで一躍有名になりました。歌い方は初期のミシシッピ・デルタ・ブルースを感じさせ、土臭いという表現がぴったりです。
ロバート・ジョンソン/ Cross Roads Blues
ロバート・ジョンソンは、「クロスロードで悪魔に魂を売って名声を得る契約を結んだからだ」という名言が残るほどギターのうまいアーティストです。超絶技巧のパフォーマンスは、世代やジャンルを超えて多くのアーティストに尊敬されています。
ブルースのギタリスト(カントリー・ブルース)
サン・ハウス/ Death Letter Blues
サン・ハウスは整形したびんの口を指にはめる、ボトルネック奏法で有名なミシシッピ・デルタ・ブルースのギタリストです。アタックの強いギターが特徴で、ときおりゴスペルに由来するシャウトも聴かれます。
ジョン・リー・フッカー/ Louise
ジョン・リー・フッカーは、2000年を超えても現役のブルースシンガーとして活躍していた長命のギタリストです。ブルースはもちろん、ブギやロックンロールの要素を取り込んでいたことから、オリジナリティを感じさせる音楽が魅力です。
チャーリー・パットン/ Mississippi Boll Blues
チャーリー・パットンは酒をよく飲み、女性と遊び、嘘をつくお調子者の典型でした。頭の後ろでギターを弾いたりフロアに寝転がって演奏したりして観客を楽しませていたそうです。パフォーマンスとは裏腹に災害や自身の逮捕についての歌詞が特徴です。
ブラインド・レモン・ジェファーソン/ Match Box Blues
ブラインド・レモン・ジェファーソンは、テキサス・ブルースを代表する盲目のギタリスト。即興的なひねりや変化をギターに加えることから、観客は常に新鮮な音楽を楽しめたのだとか。
ライトニン・ホプキンス/ Mojo Hand
ライトニン・ホプキンスは、黒いサングラスに葉巻を加えたスタイルが特徴のギタリストです。ブラインド・レモン・ジェファーソンからギターの手ほどきを受けたとされています。
サニー・テリー/ If You Lose Your Money
サニー・テリーは、ブラウニー・マギーとコンビを組んで演奏していたハーモニカ奏者です。間奏中には「ふわああああ」「ほっほっ」という声でごきげんにリズムをとります。
ブルースのギタリスト(シティ・ブルース)
パパ・チャーリー・ジャクソン/ Papa’s Lawdy Lawdy Blues
パパ・チャーリー・ジャクソンは、最初期にレコーディングをしたブルースのギタリストとされています。記録が少ないため、いまなお人物像は謎に包まれています。ニューオーリンズに生まれお金目的で収録と演奏を繰り返していたことはわかっているそうです。
ロニー・ジョンソン/ Mr. Johnson Swing
ロニー・ジョンソンは、ギターやピアノ、バイオリンなど多くの楽器を奏でたとして有名です。パパ・チャーリー・ジャクソンと同様に、多くの曲を録音で残しておりいまでも彼の演奏を存分に楽しめます。
ブラインド・ブレイク/ Diddle Wa Diddle
ブラインド・ブレイクは、明るく軽快な曲調で演奏するブルースのギタリストです。酒を飲んで踊るパーティでお金を稼げそうな楽しげな音楽を演奏していました。ブラインド・ブレイクの写真は1枚しか残っておらず、どのジャケットも同じ画像が使われているというエピソードが有名です。
タンパ・レッド/ It Hurts Me Too
タンパ・レッドは、ギターの魔術師と呼ばれることもあるほどのギタープレイが魅力的。エロティックな歌詞も相まって一躍時の人へと上り詰めたギタリストです。後に神聖な音楽を演奏するようになる、ジョージア・トム・ドーシーと一緒に活動していた時期があります。
ブルースのギタリスト(モダン・シティ・ブルース)
エルモア・ジェイムズ/ Dust My Broom
エルモア・ジェイムズは、エフェクターとアタックの強い弾き方によってアグレッシブなサウンドを演出するギタリストです。3連符を連続して弾き倒すのがエルモア・ジェイムズ特有の奏法として有名。
ブルースのギタリスト(アーバン・ブルース)
ジョウ・ダーナー/ Cherry Red
ジョー・ターナーは、身長180cm超、体重130kg超という大きな体を生かしたボーカルが特徴的です。低い音程もつややかで色っぽいのが魅力。歌詞も卑猥なものが多く見られました。
バディ・ガイ/ Damn right I’ve got the blues
バディ・ガイはいまなお活動を続けるブルースシンガーです。マディ・ウォーターズと同じ時代をかけていったものの、バディ・ガイはその後多くのアーティストと交流を深め活動の幅を広げていきました。彼は数少ない生けるブルースシンガーです。
ブルース・ロックのギタリスト
ブルースと関連がありながらも、ロックの要素が強いギタリストを解説します。ブルース発祥の国アメリカと、黒人の文化に親しんでいたイギリスのアーティストを中心に紹介。
エリック・クラプトン/ That’s All Right
エリック・クラプトンは、ヤードバーズとクリームに所属していたギタリストです。ヤードバーズに入れ替わりで所属したジミー・ペイジ、ジェフ・ベックと合わせて、3大ギタリストと呼ばれることもあるほどの実力を持ち合わせています。ブルースやロック、R&Bを背景にした彼のサウンドは必聴。
ジミ・ヘンドリックス/ Star Spangled Banner
ジミ・ヘンドリックスは、激しく叫ぶようなギターで全世界のギタリストに影響を与えました。ピックの代わりに歯を使って演奏したり、ギターを背中に構えて弾いたりと派手なパフォーマンスも話題を呼びました。ブラックミュージックを体に染み込ませた彼は、アメリカからイギリスに移動した後も活躍していました。
キース・リチャーズ/ Crosseyed Heart
キース・リチャーズはローリング・ストーンズのギタリストで、ソロとしても活躍する存命のギタリストです。アメリカのロックンロールを白人らしく表現したビートルズに対し、ローリング・ストーンズは黒人のグルーヴやスタイルを自分たちなりにアレンジしました。そのため彼からはブルースに由来した奏法を聴いてとれます。
チャック・ベリー/ Johnny B. Goode
チャック・ベリーは、ロックンロールを広めた黒人として有名です。白人ながらロックンロールを表現したエルヴィス・プレスリーに対し、チャック・ベリーは黒人によるロックンロールを世間に提示しました。ロックンロールの前進がブルースだったことはチャック・ベリーの音楽を聴けばすぐにわかるでしょう。
ブルースの有名なバンド
ブルースをバンド形式で表現したアーティスト3組の解説です。マディ・ウォーターズのようにバンド形式で活躍していたソロアーティストは除いて紹介します。
ローリング・ストーンズ/ (I Can’t Get No) Satisfaction
ローリング・ストーンズはビートルズと同時期に活躍しはじめた、ブルースを語る際には外せないバンドです。ロンドンでブラックミュージックが流行していた当時、黒人になりきろうとしていたローリング・ストーンズはブルースをバンドという形で表現します。
レッド・ツェッペリン/ Celebration Day
レッド・ツェッペリンはイギリスで生まれたハードロックバンドで、ロックというジャンルを確立させたました。ギタリストのジミー・ペイジ、ベーシストのジョン・ポール・ジョーンズ、ドラマーのジョンボーナム、ボーカルのロバート・プラントは各々が有名なアーティストです。
当初ハードロックを演奏していた彼らは、次第にブルースをはじめとした多くのジャンルを取り込みはじめます。紹介した曲はレッド・ツェッペリンの中でも、ブルース色の濃い一曲。
アニマルズ/ The House of the Rising Sun
アニマルズはローリング・ストーンズと同じように、ブルースを昇華しロックへ反映させたバンドです。ビートルズやローリング・ストーンズと合わせてブリティッシュ・インビジョンの立役者とされています。スーツ姿での演奏がトレードマークのバンドです。
ブルースの有名な女性
ブルースは男性の曲ではありません。男性と同じようにプランテーション畑で働いていた女性たちは、男性に勝るとも劣らない迫力を持ち合わせています。
ベッシー・スミス/ ‘Tain’t Nobody’s Bizness If I Do
ベッシー・スミスは人情味あふれる声質と圧巻の声量を持ち合わせた、女性ブルースシンガーの代表的な存在です。力強さと安心感という一見相反する要素をベッシー・スミスは一つにしてしまいました。ブルースの女帝と称されるにふさわしいアーティストでしょう。
ココ・テイラー/ Wang Dang Doodle
ココ・テイラーはシカゴにて活躍していたアーティストです。ゴスペル出身のココ・テイラーは強烈なシャウトとキレのある歌い方が特徴で、数あるブルースシンガーの中でも指折りの実力といえるでしょう。ブルースの女王と呼ばれるだけの理由が彼女のボーカルにあります。
ビッグ・ママ・ソーントン/ Hound Dog
ビッグ・ママ・ソーントンは、ココ・テイラーに並びパワフルな歌が魅力の女性歌手です。ビッグ・ママという名前は彼女の大きな体に由来しており、歌声を聴けばあまりの声量に驚くでしょう。ベッシー・スミスをはじめソウルフルな曲を好んで聴いていたため、ビッグ・ママ・ソーントンの歌い方にも魂が感じられます。
マ・レイニー/ Jelly Bean Blues
マ・レイニーはブルースの母と称されることもある、最初期の女性ブルースシンガーです。ベッシー・スミスはマ・レイニーから歌唱法を習ったとも盗んだとも言われています。マ・レイニーの優しく包み込むような歌はまさに母と呼ぶにふさわしいでしょう。
ブルースの有名日本人
アメリカで生まれたブルースは、遠く離れた日本にも普及しました。ノリの良い音楽ではないためJ-POPのように爆発的な人気は生まれないものの、知る人ぞ知るマイナーな音楽としていまもなお歌われ続けています。
憂歌団(内田勘太郎)/ 嫌んなった
憂歌団は、本場のブルースをそのまま日本に持ち込んだかのような音が持ち味のバンドです。ブルース発祥の地ミシシッピについての歌詞や、現地さながらの歌い方が特徴的。ブルースを聴き込んでいる人なら、日本人かと疑問に思うほどの完成度です。
近藤房之助
近藤房之助は、BREAK DOWNや渚のオールスターズに参加していたブルースマンです。近年ではブルース以外のジャンルを歌う機会も増えていますが、どのような曲を歌っても彼のブルースを感じずにいられません。
Drop’s/ さらば青春
Drop’sは、ブルースとロックをかけあわせたようなサウンドが心地よいガールズバンドです。中野ミホのしゃがれたブルージーな歌声は、年齢から想像できない渋さを感じます。ロックの色も強めなので現代版ブルースとして聴くのがよいでしょう。
The Birthday/ さよなら最終兵器
The Birthdayは、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTに所属していたGt.&Vo.のチバユウスケとDr.のクハラカズユキによって結成されたバンドです。THEE MICHELLE GUN ELEPHANTの勢いはそのままに、哀愁漂うサウンドを響かせています。アルバムによってサウンドが変わるのも興味深いポイント。
ブルースで感傷的になる
ブルースのギタリストをはじめ、主要なアーティストを紹介しました。昔ながらのブルースシンガーやブルースの要素を楽曲に織り交ぜたアーティストなど、多くの種類の人がいます。
しかしいずれもブルースの哀愁を漂わされているといえないでしょうか。もともとは劣悪な労働環境で働いていた黒人が歌っていたブルース。楽しさではなく憂いを表現したいとき、聴きたいときに人はブルースを聴きたくなるのだと思います。
ブルースのインストゥルメンタルはない
ブルースのインストゥルメンタルは、基本的にありません。ブルース調で歌が入っていない曲はあるかもしれませんが、歌がない時点でブルースといってよいのか怪しいです。
やるさなさや気だるさを表現するブルースは、歌詞を含め楽しむべきでしょう。