ブルースの意味や歴史、他ジャンルとの違い、代表的なアーティストなどについて解説。本記事を読めば、ブルースの概要が端的にわかります。
- ブルースの語源は、哀愁や憂いを表すスラング「blue」
- ブルースの主な起源は、アメリカ黒人のワーク・ソング
- B・B・キング、マディ・ウォーターズ、ロバート・ジョンソンが有名
目次
ブルースの意味
ブルースは、アメリカ南部の綿花プランテーションにて生まれました。黒人が綿花畑で歌うワーク・ソングやフィールド・ホラーが起源です。語源は日常の憂鬱や悲しさを表す「blue」で、労働のつらさや恋人とのつれなさを歌った歌詞が特徴です。
他ジャンルとの違い
ブルース×ジャズ
ブルースの発祥がミシシッピを始めとした綿花畑にあるのに対し、ジャズは黒人と白人、クレオールの入り混じったニューオーリンズを起源とする説が有力です。ブルースは黒人のリズム感をギターとボーカルだけで表現し、ジャズは黒人のリズムと白人のメロディを数人〜数十人のバンドで演奏する点で異なります。
ブルース×フォーク
ブルースとフォークはどちらも労働者階級から生まれたジャンルですが、ブルースは黒人によって、フォークは白人によって作られたというのが通例です。アコースティックギターやバンジョーを使用する点は共通しています。
他ジャンルとの関わり
ブルース×ハードロック
ハードロックにブルースの要素をかけ合わせたアーティストとして、レッド・ツェッペリンやクリームがあげられます。ハードロックの重厚感ある演奏にブルージーなメロディの加わるパターンがよくあります。ロックンロールはブルースから生まれているため相性がよいのも納得です。
ブルース×ヒップホップ
ブルースとヒップホップは、低い階級の黒人によって生まれた点で共通しています。ヒップホップのサンプリングとして、使用されるファンクやディスコはそのもとはブルースです。もちろん、ブルースそのものがサンプリングされることもあります。
ブルースの歴史
ブルースのはじまり

ブルースはアメリカ南部に起源があり黒人が始めたとされています。南北戦争前後のアメリカでは、ミシシッピやメンフィスのあたりにて綿花栽培が行われていました。
綿花の畑は現地の白人である地主が、アフリカから連れてきた黒人を小作人として雇い耕していたそうです。しかし、畑での作業はあまりに過酷で賃金も見合っていなかったため、黒人は途方にくれていました。
そんな背景で生まれたのがブルースのもとになった、ワーク・ソングとフィールド・ホラーです。なお、部族ダンスやミンストレルが起源に含まれるという説もあります。
ワーク・ソング
ワーク・ソングとは、働いている黒人がコール・アンド・レスポンスの形式で声を発する一種の呼応様式です。一人がなにかしらの言葉を発したらあとの数人が同じ言葉を繰り返し発します。
畑の仕事はテンポよくかつ重労働に耐えながら行う必要があったため、仲間と意思疎通の取れる呼びかけの形式が用いられたと考えられています。
フィールド・ホラー
フィールド・ホラーはワーク・ソングと反対に、独り言のようにだれもいない場所で一人で歌う形式です。ワーク・ソングは連帯を強める意味を持っていたのに対し、フィールド・ホラーは感情を吐露する役目があったようです。
カントリー・ブルース

時代は19世紀後半から20世紀半ばにまで進みます。そのころ、ワーク・ソングやフィールド・ホラーはブルースへ変化しつつありました。最初期のブルースはバンジョーで、次第にギターを使って演奏されていきました。
労働がつらい、女がつれない、金がないといった感傷的な気持ちをブルースに込める通例が広まりました。うれしい感情も歌詞にはしたものの、多くはありませんでした。
カントリー・ブルースは発祥の地とスタイルによって、ミシシッピ・デルタ・ブルース、テキサス・ブルース、イースタン・ブルースに分類されます。
ミシシッピ・デルタ・ブルース
ミシシッピ・デルタ・ブルースは、黒人差別がひどく労働環境も劣悪であったミシシッピ・デルタ近辺で生まれたスタイルです。
特徴は荒々しく力強いことでした。パワフルな歌声と自由なコード進行のため、ブルースシンガーの感情がありありと伝わってくるブルースです。
有名なアーティスト
- サンハウス
- ジョンリーフッカー
- ロバートジョンスン
テキサス・ブルース
テキサス・ブルースでは、ミシシッピ・デルタよりは黒人と白人が険悪でなく、お互いの文化が取り入れられていました。
黒人の音感やリズム感に、白人の音楽形式や音楽理論が混ざり合い、12小節と3コードという暗黙の了解が作られています。
有名なアーティスト
- ブラインドレモンジェファソン
- ライトニングホプキンス
イースタン・ブルース
イースタン・ブルースは、ノースキャロライナ州、サウスキャロライナ州、ジョージア州のあたりで生まれたブルースです。
テキサス・ブルースと同じぐらい白人の割合が少なかったことに加え、奴隷解放が進んでいたためブルースに白人の文化が大いに取り入れられました。
有名なアーティスト
- ブラインドウィリーマクテル
- バーベキューボブ
- サニーテリー
シティ・ブルース

シティ・ブルースは奴隷解放により、アメリカ南部の綿花畑から北部にある都市へ稼ぎにでかけたアーティストによって生まれました。
北部に多く住んでいる白人に受けるよう、ポップソングやミンストレル、ジャズ、ラグタイムの要素を取り入れました。
有名なアーティスト
- パパチャーリージャクソン
- ロニージョンソン
- アーサーブラインドブレイク
クラシック・ブルース
クラシック・ブルースはバンド編成で演奏されるブルースです。ジャズやポップソングのように、バックバンドを従えながらボーカルが歌唱する形式をとっていました。
女性のマ・レイニーやベッシー・スミスが活躍していました。しかし、大恐慌により観客が余暇に金を費やさなくなり規模が縮小し、スタイルは衰え始めました。
有名なアーティスト
- マ・レイニー
- ベッシー・スミス
モダン・シティ・ブルース
シティ・ブルースの初期から中期にかけては、白人の文化に入り込もうとしていました(「同化」と呼ばれます)。しかしブルース元来の考え、つまり黒人の精神的な部分が失われているとして、アメリカ北部への進出は停滞の一路をたどっていました。
しかし、第二次世界大戦のころから再びアメリカの主流文化へ近づこうと、ブルースの歌い手たちは北部へ向かいました。このころのスタイルをモダン・シティ・ブルースといいます。
有名なアーティスト
- マディ・ウォーターズ
- エルモア・ジェイムズ
アーバン・ブルース
楽観性を伴うカンザスシティのスタイルと、悲観的なテキサスのスタイルの2つに分けられます。カンザスシティは新しい土地であったため、白人と黒人が同時期に移り住み差別の少ない地域で、喜びやうれしさを表現する歌が多く見られました。
他方、テキサスのスタイルは、初期のカントリー・ブルースの要素が多分に見られる粗野なものでした。数名のバンドからビックバンドへと発展していき、迫力も増していきます。超絶技巧のギタリストとして有名なT-ボーン=ウォーカーはテキサスのブルースシンガーです。
また、カンザスシティとテキサスの要素のかけあわせをモダン・アーバンスタイルと呼びます。
有名なアーティスト
- ジョウ・ダーナー(カンザスシティ)
- T-ボーン・ウォーカー(テキサス)
- B.B.キング(モダン・アーバン・スタイル)
ソウル
黒人の力強さを歌ったブルースは次第に、ソウルミュージックへと変容していきました。ブルース元来のメンタル面を押し出した、のちの公民権運動につながる音楽です。
有名なアーティスト
- ジェームス・ブラウン
- レイ・チャールズ
- オーティス・レティング
ブルースの代表的なアーティスト
続いてブルースの著名なアーティストを紹介します。エレキギターを採用したT-ボーン・ウォーカーとマディ・ウォーターズ、超絶技巧のロバート・ジョンソン、そしてブルース界の巨人B・B・キングが代表的なブルースシンガーです。。
ブルースのギタリストやバンドの詳しい情報は下の記事で紹介しています。チェックしてはいかがでしょうか。

B・B・キング
B.B.キングは、ブルース界の巨人と称されることもあるブルースを代表するギタリストです。アーバン・ブルースであるカンザスシティとテキサスのスタイルを織り交ぜた演奏が特徴的でした。
T-ボーン・ウォーカー
T-ボーン・ウォーカーは、ブルースではじめてエレキギターを使用したとされるシンガーです。ただし彼のブルースはジャズに近く、本格的なブルースはマディ・ウォーターズの登場をまたなくてはいけませんでした。
マディ・ウォーターズ
マディ・ウォーターズは、ブルースにエレキギターとバンド編成を本格的に採用したギタリストです。名前のとおり、泥臭い渋い演奏が魅力。
ロバート・ジョンソン
ロバート・ジョンソンは、「クロスロードで悪魔に魂を売って名声を得る契約を結んだからだ」と噂されるほど腕のたったギタリストです。後世のギタリストにも大きな影響を与えた彼のスタイルは、ブルース以外のアーティストにとっても偉大とされています。
ブルースの奏法・楽器
ブルースにはウォーキングベースをはじめ、特有の奏法が見られます。アコースティックギターやブルースハープといった電気を使わない楽器のほか、近年ではエレクトリックギターを利用しバンドで活動するアーティストもいるなど、編成もさまざま。楽器やコード進行についてチェックしましょう。
ギター
ギターはブルースシンガーにとって欠かせない楽器です。ブルースが誕生した初期のころは、バンジョーや1本弦の楽器も使われていましたが、いまでは多くがギターに取って代わられています。
ギターの奏法を習得するうえで参考になるサイトや、どのような機材が使わているのかを説明します。
参考になるサイト
ブルースのギターを勉強するのであれば、a-ki’s factoryかGuitarStyleNetを参考にするのがよいでしょう。
特にa-ki’s factoryはギターの奏法のほか、有名なブルースギタリストも紹介しているため、ブルースへ本格的に取り組みたい方向けのサイトです。


機材
ブルースのギターといえば、アコースティックギターが一般的です。アコースティックギターの前にマイクを立て音を鳴らします。シールドを刺せるタイプのアコースティックギターもあります。
一方、マディ・ウォーターズのようにエレクトリックギターを使うこともあるでしょう。バンド編成では、エレクトリックギターのほうがサウンドを埋もれさせずにすみ、存在感を与えます。エレクトリックギターを使う際であってもエフェクターは使わないか最小限に抑えるケースが大半でしょう。
ブルースハーブ(ハーモニカ)
ブルースハープは、アコースティックギターと併用されることの多い楽器です。ブルースで使用されるハーモニカは10ホールズハーモニカと呼ばれ、10この穴が空いています。
吹いても吸っても演奏できるのが特徴で、アコースティックギターのバッキングやリードとあわせやすい点が強みです。ブルースハープの概要は下の記事で確認できます。

その他楽器
バンド編成の場合は、ベースやドラムがいっしょに演奏します。ソロのときよりビートが強調され、踊りやすい曲調に近づきます。ピアノやサックスをバンドに加えると、ブルースが華やかに変化させられます。
コード進行
ブルースは、3コードによる進行が頻繁に使用されます。素朴なブルースの場合は3コードをもちいたシンプルな演奏、ジャズのようにおしゃれに演奏する場合は音楽理論的に凝った演奏がなされます。
ブルースのコード進行やブルーノートについては下の記事で紹介しています。

ブルースの教則本
ブルースをすぐにはじめたいというあなたには、教則本を買いひととおり勉強してしまうのが手っ取り早くおすすめです。どの教則本がいいのかわからないあなたに、とりあえず読んでおけば間違いのない教則本を2冊紹介します。
はじめてのブルース・ギター
ギター・マガジンで有名なリットー・ミュージックが出版している「はじめての〇〇」シリーズです。
とりあえずの基礎から、変化をつけたいときの応用までを1冊で網羅しています。DVDがついているため、本からではわからない情報を視覚的にチェックできます。
ブルース・ギターの常套句200
「はじめてのブルース・ギター」とは対象的に、とりあえず弾くためのフレーズが満載の一冊です。「細かいことはわからないけどすぐに弾きたい!」と考えているのであればおすすめします。
ブルースの映画
アイ・アム・ザ・ブルース
いまなお現役で歌い続けている、ブルースのアーティストを追ったドキュメンタリー映画。口頭による語りはもちろん、ギターを伴ったパフォーマンスは一見の価値ありです。2017年のグラミー賞にて受賞経験のあるボビー・ラッシュも出演しています。
約束の地、メンフィス ~テイク ・ ミー ・ トゥー ・ ザ ・ リバー~
『約束の地、メンフィス ~テイク ・ ミー ・ トゥー ・ ザ ・ リバー~』は、ブルースの生まれた地メンフィスやルイジアナが舞台のドキュメンタリー映画です。ブルースのアーティストが多数登場し、自らの口でブルースを表現する様子は必見。
ブルースでブルージーに浸る
ブルースは特有の「憂鬱な」「後ろ向きな」感情ありきのジャンルです。
ブルーノートと呼ばれるブルースっぽい音を取り入れればブルースのサウンドには近づきますが、嘆きの感情や訴えかける感情は表現できません。
ブルースを本当にの意味で演奏できているアーティストは、今ではそう多くないように思えます。
【ブルースの関連記事】
・ブルースハープとは
・ブルースのコード進行とは
・ブルースの代表的なアーティストまとめ