ファンクの意味や他ジャンルとの違い、代表的なアーティスト、ギター・ベース・ドラムの奏法を解説します。
- 起源は、ソウルやジャズ、ロックンロール
- 1拍目に重きをおいた16ビート
- 打楽器を連想させるタイトな演奏
目次
ファンクの意味
ファンクとは、ソウルやジャズ、ロックンロールを起源とした音楽ジャンルの一つです。英語のfunkに由来し、もともとは黒人らしい匂い・体臭を意味する単語でした。テンポはBPM80〜110ほどの遅い曲が多く、踊りたくなるような曲調が印象的です。
歌詞は黒人を勇気づけるものから、まったく意味をなしていないものまでさまざまです。
黒人の偉大さに触れた歌詞が多いのは、同時期に活発だったマーティンルーサーキング牧師(以降、キング牧師)先導の公民権運動と強い関連があります。
ファンクと他ジャンルの違い
ジャズとの違い
ファンクとジャズの大きな違いは、踊らせるための音楽かそうでないかです。ファンクは観客・奏者ともに踊りながら展開するケースが多々あります。反対に、ジャズは観客がイスに座った状態で演奏される場合が大半です。
しかし、ファンクとジャズはお互いに影響を与えながら発展していったため、明確に区別するのは困難です。ジャズの代表的なアーティスト、ハービー・ハンコックやマイルス・デイヴィスのスタイルからもファンクの色が見て取れます。
フュージョンとの違い
フュージョンはファンク以上に多くのジャンルから影響を受けている点で、ファンクとは異なります。フュージョンの前進にクロスオーバーというジャンルがあり、クロスオーバーは「ジャンルを超える」ことに言葉が由来しているほどです。
ブルースとの違い
ブルースは踊らせるのではなく感傷的にさせるため、ファンクと区別されます。ブルースもファンクも黒人の音楽であることには変わりありませんが、苦しみをそのまま歌ったのがブルース、娯楽に変換して歌ったのがファンクと言えるでしょう。
ヒップホップとの違い
ヒップホップはボーカルではなくラッパーが主体です。つまり、歌うのではなくラップするという違いがあります。また、演奏する代わりに他人の楽曲から音を借りるのもヒップホップの特徴です。ファンクの音楽はヒップホップにおいてメジャーな楽曲です。
ディスコとの違い
ディスコは白人も含めて踊りやすいようにBPM120前後で制作されるジャンルです。ファンクよりテンポが速く黒人特有のグルーヴは見られません。初期のディスコこそファンクのようなビートも残っていましたが、ビートが電子化するにつれノリが単一的に変化しました。
ファンクのアーティスト
ファンクを語るにおいて欠かせないアーティストを紹介します。ファンクの名盤・名曲をさらに知りたい方は、次の記事をチェックしてください。

おすすめ・人気
ジェームス・ブラウン
ジェームス・ブラウンは、ファンクの帝王と称されることもあるファンクを作り出した人物です。ゴスペルから始まった彼のキャリアは、ソウルを経てファンクへと昇華されました。コール・アンド・レスポンスや予測できないライブ展開など、彼の魅力は尽きません。
スライ&ザ・ファミリー・ストーン
スライ&ザ・ファミリー・ストーンは、ファンクと共に生きた苦悩のバンドです。当時としては画期的だった、男女混合・白人黒人混合のバンドでした。ヒッピー文化のきっかけとなったウッドストック・フェスティバルで人気だった彼らは、ファンクを流行に導いていました。
Pファンク
Pファンクとは、ジョージ・クリントン率いるバンド、パーラメントとファンカデリックの音楽をまとめて指す言葉です。パーラメントは土臭いファンクを、ファンカデリックはギターの映えるファンクを強みとしています。
インストゥルメンタル
ミーターズ
ミーターズはニューオーリンズの代表的なアーティストです。ニューオーリンズは、黒人と白人、クレオールの文化が入り混じった結果、ジャズをはじめオリジナルの音楽を次々に生み出しました。ミーターズが得意とするセカンドラインファンクもニューオーリンズ発祥の音楽です。
The JB’s
The JB’sは、JBことジェームス・ブラウンのバックバンドによるインストゥルメンタルバンドです。ジェームス・ブラウンの楽曲をボーカルがいない代わりに、サックスやキーボード、ベースでメロディを奏でています。
邦楽・J-POP
在日ファンク
在日ファンクは、元来のファンクを素直に表現している日本に数少ないバンドです。日本人にはあまり聴き馴染みのないファンクを、ホーンセクションも入れた本格的なバンド形式で聴かせてくれます。
ズットズレテルズ
ズットズレテルズは、パーラメントを想起させる衣装と身にまとった愉快なファンクバンドです。ベースはOKAMOTO’Sに所属するハマ・オカモトが担当しています。ファンク特有のユーモアここにあり、です。
BRADIO
BRADIOは、ロックやソウル、R&Bの影が見てとれる日本のバンドです。スーツの衣装で演奏する点も含め、古き良きアメリカを意識している点で興味深いバンドです。
女性ボーカル
チャカ・カーン
チャカ・カーンは、R&Bの女王と呼ばれることもあるほどの歌唱力をもったアーティストです。彼女はファンクバンド、ルーファスで一躍有名になります。若い歌手に負けない声量とハイトーンボイスが魅力です。
シャロン・ジョーンズ
シャロン・ジョーンズは、女性版JBと称されることもある圧巻のボイスが特徴のアーティストです。大きな体から発せられる太く包み込むような歌声は、JBにはない強さを見せてくれます。
ベティ・デイヴィス
**
ベティ・デイヴィスは、**ハリウッド女優としても有名なアーティストです。多方面での活躍から音楽界以外に与えた影響も大きかったようです。ジャズの代表的な奏者、マイルス・デイヴィスをフュージョンに引き入れるほどの影響力でした。
ファンクの楽器
ファンクでは、多くの楽器が使用されます。次の学期は一例です。
- ギター
- ベース
- ドラム
- ボーカル
- キーボード(シンセサイザー)
- ホーン(サックスやトロンボーン)
ファンクにおけるそれぞれの楽器の特徴を解説します。
ファンク×ギター
ファンクのコード進行
ジェームス・ブラウンのような典型的なファンクは、ほぼ1,2このコードで構成されています。特徴は次のとおりです。
- 基本はサブドミナント
- ここぞというときのドミナント
- 7th, 9th, 13thの多用
西洋にありがちなトニック→サブドミナント→ドミナント→トニックの流れは見られません。ファンクは踊らせることが目的であり曲を引き伸ばしたいからです。
サブドミナントを長い間繰り返して焦らしたあとにドミナントで「おっ」と思われる流れが典型です。ちなみにコードはおしゃれな7thや9th、アクセント的に13thを使うというのがよくあります。
ファンクはカッティング
ファンクのギターは基本的にずっとカッティングです。人によっては打楽器のようだと形容することもあります。ロックのようにピロピロすることはなくただひたすらリズムを刻むことに集中します。裏や16分裏でハネるのがポイントです。
たまにリードギターのように鳴らしているバンドもありますがレアケースです。ファンカデリックのギターは、ジミ・ヘンドリックスに影響されているので例外です。クイーンもですね。
ギターの音作り・エフェクター
音作りはカッティングを活かすために、クリーンに近いセッティングがいいでしょう。ミドルを少しあげてクランチに寄せてもかまいませんが、音がもこもこしすぎないように注意が必要です。ギターの種類はテレキャスターの音が近しいです。
ファンク×ベース
(ドラマーなのでメロディに関しては正直に言うとわかりませんが…)リズムは1拍目が重要です。1拍目を制すものがファンクを制します。
ジェームス・ブラウンのベーシストとして指導を受けていたブーツィー・コリンズは、1拍目(the one)を重要視するよう再三注意されたようです。
ただし、ブーツィー・コリンズが黒人であることを忘れてはいけません。彼には教養として黒人のグルーヴが見についています。ブラックミュージックの基礎があっての1拍目だということを忘れないようにしてください。
ファンクのスラップ
ファンクで頻繁に聴かれるのがスラップ奏法です。他の楽器隊がシンプルな演奏を心がけるのに対し、ベースのみがスラップでブイブイにリズムを刻みます。グラハムセントラルステーションのPowはファンクのスラップをこれでもかというほど詰め込んだ名曲です。
ファンク×ドラム
ドラムパターン
ネットでよく見かけるドラムパターンは、16ビートを表現して〜というのが通説なようです。たしかにロックの8ビートと比較するとファンクは16ビートだというのもわからなくはありません。しかし、わたしは次の3点を述べておきたいです。
- 手数ではなくノリを16ビートにする
- 1拍目(the one)を大事にする
- 2と3のリズムをかける
「とりあえず16分音符を叩けば良いのでしょう」と思っていると、ファンクは演奏できません。下の音源でもドラムはほぼ16分を演奏していません。でもファンクにはなっています。
黒っぽいノリ(体からノリを生み出すほかない)があれば8ビートのフレーズでも16ビートっぽく聴かせられます。大事なのはノリです。
また、ブーツィー・コリンズの例にならって1拍目も重要です。
私個人としては2と3のリズムを体に持つことも忘れてはいけないと思います。意識したことがないかたは「なんのこと言ってるんだ?」と思うかもしれませんが、詳しいことはこちらをチェックしてください。


ファンク×ボーカル
ファンクのボーカルはリズム感が重要です。楽器隊と同じくハキハキした言い方で打楽器のようにリズムをとっているボーカルが数多くいます。歌詞は意味がないものから、黒人の人権を主張するものまでさまざまです。
ファンク×キーボード
ファンクのキーボードは、他楽器と同じようにリズムをただ刻む場合と、アクセント的に弾く場合があります。リズムを刻む場合は他の楽器とタイミングが合うように、コーラス的に音を入れる場合はビートを邪魔しないようにうるさくない音色で演奏します。
ファンク×ホーンセクション
ファンクは、ジャズに影響されていることもありサックスをはじめとしたホーンセクションがあります。間奏やインストゥルメンタルでは前面に出てきますが、基本はリズム楽器と化します。
ファンクのファッション・服装
ファンクのファッションと言えば、Pファンクやスライ&ザ・ファミリー・ストーンの着用しているド派手な衣装が特徴です。奇抜な衣装はジャケット写真にも見て取れます。
派手な衣装が並ぶ中でもひときわ印象的なのが、星型のサングラスがトレードマークのベーシスト、ブーツィー・コリンズ。彼はジェームス・ブラウンとジョージ・クリントン(Pファンクのリーダー)のもとで活躍していたとともに自身も奇抜な衣装を身にまとい愉快なファンクを奏でています。
ファンクは踊るための音楽
ファンクはブラックミュージックの中でも踊りに特化した音楽です。憂いを歌うブルース、演奏を楽しむジャズ、リリックをぶつけるヒップホップとは、踊りという点で大きく異なります。
また、踊らせる音楽のディスコやEDMとも一味違います。黒人の”踊り”と白人の”踊り”は意味ところが異なります。白人は4つ打ちにリズムに合わせて体を上下させますが、黒人は表拍と裏拍で体を前後に動かします。
結果的に短命に終わってしまったファンクですが、レッドホットチリペッパーズをはじめファンクに影響を受けているアーティストは相当数います。ファンクを知ることはアメリカ音楽の研究につながるでしょう。